年齢を重ねるにつれ、肌のハリが失われたり、疲れが取れにくくなったりして、体の変化を実感する方は少なくありません。そんな加齢のサインに内側からアプローチできる成分として、いま注目を集めているのが「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」です。
NMNは、体内でエネルギーを生み出す物質「NAD」に変換され、細胞の修復や代謝をサポートする働きがあります。近年では、ヒトの老化を抑制する可能性があるとして、世界各国で研究が進められています。
本記事では、NMNの基礎知識から注目を集める理由、さらに摂取時のポイントまでわかりやすく紹介します。加齢による体の変化が気になる方や、日常でエイジングケアを取り入れたい方のヒントとしてご活用いただければ幸いです。
NMNの基礎知識を解説
NMNは、「次世代のエイジングケア成分」として、2015年ごろから注目され始めました。2019年ごろには、多数の大手メーカーがNMNサプリメントの流通を開始し、やがてエイジングケアに敏感な芸能人や経営者、体調管理が資本のアスリートたちが愛用を公言するようになると、徐々に一般消費者にも認知度が高まっていきました。
では、NMNを摂取することでどのような効果が期待できるのでしょうか。ここでは、話題の成分の基礎知識を解説します。
NMNとは
NMNは「ニコチンアミドモノヌクレオチド」の略称で、ビタミンB3を材料として生成される成分です。体内に取り込まれると、「NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」という物質に変換されます。
NADは、細胞内で生命活動を維持するために欠かせない物質です。特にミトコンドリアでATP(エネルギー)を生み出す過程に関わり、体の活動を支えています。また、DNAの修復や遺伝子の安定にも関与し、老化や疾病予防に重要な役割を持つとされています。
さらに重要なポイントが、NADはサーチュイン遺伝子の活性化させる点です。サーチュイン遺伝子は、老化や寿命の調節に関わる重要な遺伝子で、「長寿遺伝子」「抗老化遺伝子」とも呼ばれています。近年の研究では、NADがサーチュインを活性化させることで細胞の老化を抑え、健康寿命を延ばす可能性が示されています。
しかし、NADは加齢とともに体内での生成量が減少します。その結果、臓器や組織の機能低下、エネルギー不足に陥るだけでなく、老化関連疾患との関係も指摘されます。ただしNADそのものを摂取しても、胃や腸で分解されてしまい、その効果はほとんど発揮されません。そのため、NADの前段階であるNMNの摂取が推奨されています。*1
NMNが注目を集めたきっかけ
NMNの研究は2011年頃から開始され、その中心となって動いていたチームが米国ワシントン大学の今井眞一郎教授らとされています。
今井教授のチームは、生後5か月のマウスが17か月になるまで1年間NMNを与える実験を行い、老化研究を進めます。その結果、マウスは体の代謝が上がり中年太りが抑えられ、体格が引き締まることが判明しました。さらに、老化に伴う遺伝子の変化を抑制し、骨格筋や肝臓の機能改善や免疫細胞の数の増加などにも効果があることも証明しました。*2

日本では、2011年6月に放送された「NHKスペシャル ネクストワールド」において長寿遺伝子の特集が行われ、話題を呼びます。番組内において今井教授が携わったNMNの抗老化研究が取り上げられたことにより、国内でも期待のまなざしが強まったようです。その後もさまざまなメディアがその有用性に触れており、「夢の若返り成分」としてたびたび注目を集めています。
参考:NHKアーカイブス NHKスペシャル あなたの寿命は延ばせる~発見!長寿遺伝子~
日常生活におけるNMN摂取のメリット
NMNは、今井教授らによる研究発表や大手メディアでの紹介をきっかけに広く知られるようになりました。その枠を越え、いまでは美容意識の高い方や健康的な生活を過ごしたい方からも注目を集めています。
ここでは、NMNを摂取すると、私たちの日常生活にはどのようなメリットがあるのか、分かりやすく解説します。美容や健康に役立つと広く知られるようになった今だからこそ、毎日のケアに取り入れるためのヒントとしてお役立てください。
体力づくりに役立つ
NMNの摂取によって、体のエネルギー代謝を担うミトコンドリア機能が活性化し、疲労感の軽減や運動パフォーマンスの向上につながることが報告されています。特に、米国ワシントン大学医学部の今井眞一郎教授らの研究では、NMNを長期間摂取したマウスで運動耐性の向上や筋力維持の効果が確認されました。*3
さらに、ヒトを対象とした臨床研究でも、NMN摂取群で歩行速度や下肢の筋力が有意に改善したという結果が示されています。*4
これらの成果から、加齢にともなう体力低下や持久力の衰えをサポートし、疲れにくく活動的な日常を維持するうえで役立つと考えられます。そのため、デスクワーク中心の生活で慢性的な疲労を感じる方や、日々のパフォーマンスを高めたいアスリートの間でも、活用が広がっているようです。
コラーゲンやエラスチンの生成をサポート
年齢を重ねるとともに、肌の若々しさが失われていくのは、細胞内のエネルギー代謝が低下し、コラーゲンやエラスチンといった弾力を支えるタンパク質の生成能力が衰えることが主な原因です。こうした変化は、紫外線やストレスなど外的要因によってさらに加速します。
このとき重要な役割を果たすのが、細胞の修復や再生を支えるNADです。NADの量が増えると、細胞内の代謝が活性化し、ダメージを受けた細胞の修復がスムーズに進むようになります。結果としてコラーゲンの合成が促され、肌のハリや弾力、透明感を保つ助けになると考えられているのです。
実際にマウスを対象とした研究では、NMNの投与によって動脈壁のコラーゲンI型の過剰な蓄積が抑えられ、弾性タンパク質であるエラスタンの量が増加したとの報告があります。また、ヒト皮膚線維芽細胞を用いた実験でも、NMNを添加することでコラーゲンI型の産生が上昇したとする研究結果が示されました。*5
質の高い眠りにいざなう
良質な睡眠や認知機能のサポートにもNMNが注目されています。体内では ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD⁺)が神経伝達や脳細胞のエネルギー生成に深く関わり、これが脳の疲労回復・集中力の維持・深い眠りの促進につながると考えられています。
65歳以上の高齢者を対象とした12週間のプラセボ対照二重盲検試験では、一日に250 mgのNMNを摂取したグループが、睡眠の質を示すPSQIスコアで有意な改善を示したという報告が挙がっています。*6
このように、体の内側から若々しさと活力を再構築するエネルギーリペアとしての役割も果たすと期待が高まっています。
ヒトの健康寿命は延びるのか

NMNは、運動機能や美容、睡眠の質などをサポートする成分としてだけでなく、健康寿命を延ばす可能性がある点でも注目されています。
健康寿命とは、介助を必要とせず自立して生活できる期間のことです。近年の研究では、NMNが体内でNADを増やし、エネルギー代謝や免疫機能、血管・神経の働きを維持することで、加齢にともなう機能低下を遅らせる作用が期待されています。
続いては、NMNがヒトの健康寿命を延ばす可能性について解説します。
すでにNMNをヒトに投与する臨床実験は行われている
NMNの臨床研究は、すでに世界各国で進められています。2021年4月、米国の研究チームが科学誌『Science』オンライン版で発表した論文では、NMN摂取により筋肉の再構築を促す遺伝子の活性が高まることが確認されました。
オーストラリアの研究グループにおいても、加齢による生殖機能の低下を防ぐ可能性があることを報告しました。これらの結果は、NMNが単なる動物実験にとどまらず、人においても老化抑制や機能維持に寄与する可能性を持つことを示しています。*7
こうした臨床データが蓄積されることで、「老化を遅らせる次世代の有望成分」として、さらに今後の研究と応用の広がりが期待されています。
ヒトの細胞の老化抑制につながる?
NMNが老化の抑制に関係すると考えられる理由は、体内で生成されたNADがサーチュイン遺伝子を活性化する点にあります。
サーチュイン遺伝子は7種類存在し、その中でも特に注目されているのがSIRT1です。SIRT1は糖や脂質の代謝を整え、神経細胞を保護するなど、老化の進行を遅らせる働きを持つと報告されています。
ワシントン大学の今井眞一郎教授の研究チームは、このSIRT1の働きを強化した遺伝子改変マウスを用いて実験を行い、老化に伴う症状や疾患の発症が遅れたことを確認しました。その結果、メスでは約16.4%、オスでは約9.1%健康寿命が延びたとされています。*8

人間はマウスに比べて寿命が長く、同様の効果を直接確認することは容易ではありません。しかし、臨床研究では代謝指標や血管・心臓機能の改善が報告されており、NMNの継続的な摂取が健康寿命の延伸につながる可能性が示されています。つまり、NMNは老化を止めるわけではなく、細胞の衰えを遅らせ、健康な期間を長く保つための重要な要素といえます。
NMN摂取で注意するポイント
美容や健康をサポートする成分として注目を集める一方で、長期的な安全性や効果の持続性については、まだ十分なデータがそろっていないのが現状です。日本やアメリカ、中国などでは現在も臨床研究が進められており、老化抑制や生活習慣病の予防にどの程度寄与するのか、長期摂取で副作用が起こらないかなどの検証が続いています。
ただし、これまでに報告されている臨床試験においては、適切な量を守れば重篤な副作用は確認されていません。慶応義塾大学医学部内科学教室の伊藤教授チームの研究では、体内で自然に存在する代謝物である点を踏まえ、適正摂取であれば安全性は高いと発表しました。*9
一方で、NMNの安全性が確認されているのは経口摂取に限られており、静脈注射(点滴)での摂取は推奨されていません。血液中に直接注入することで必要以上に成分が吸収されてしまい、体内でNADの分解が促進されるリスクが指摘されています。*10 日常生活においては、毎日の食事やサプリメントなどの補助食品を利用して摂取するのが望ましいでしょう。

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まとめ
NMNは、体内でNADへと変換され、細胞のエネルギー代謝やDNA修復を支える重要な物質です。加齢によりNADが減少すると細胞の老化や機能低下が進むことから、NMN摂取による補給が注目されています。
近年の研究では、運動機能や肌の弾力、睡眠の質の改善など多方面での有用性が報告されており、健康寿命の延伸にも期待が寄せられています。
気軽に十分な量を摂取する方法としてはサプリメントがおすすめですが、一定の臨床試験により安全性と機能性が確認されているものを選ぶのが望ましいです。日常生活にうまくNMNを取り入れて、健康で若々しい毎日を目指しましょう。
参考文献:
*1 エイジングの未来を変える衝撃の新成分 NMNの秘密 渡辺昭義 2022 栄養書庫 p.4-7
*2 Clinical evaluation of changes in biomarkers by oral intake of NMN(日本語訳:NMN経口摂取による各種バイオマーカーの推移についての臨床的評価/https://www.toukastress.jp/webj/article/2022/GS22-16j.pdf )
*3 Masaki Igarashi, Yoshiko Nakagawa-Nagahama, Masaomi Miuraほか(2022)「Chronic nicotinamide mononucleotide supplementation elevates blood nicotinamide adenine dinucleotide levels and alters muscle function in healthy older men」
*4 東京大学 ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)で高齢男性の運動機能が改善~超高齢化社会の課題“サルコペニア”の予防効果に期待~(https://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/__icsFiles/afieldfile/2022/05/06/release_20220501_1.pdf)
*5 Risako Betsuno, Takuya Yamane, Hiroko Tsuji, Yu Nakajima, Momoko Imai,ほか(2025)「Permeation of Nicotinamide Mononucleotide (NMN) in an Artificial Membrane as a Cosmetic Skin Permeability Test Model」
*6 Mijin Kim, Jaehoon Seol, Toshiya Sato, Yuichiro Fukamizu, Takanobu Sakurai, Tomohiro Okura(2022)「Effect of 12-Week Intake of Nicotinamide Mononucleotide on Sleep Quality, Fatigue, and Physical Performance in Older Japanese Adults: A Randomized, Double-Blind Placebo-Controlled Study」
*7ニューサウスウェールズ大学シドニー校医学部「 NAD +補充は生殖老化における女性の生殖能力を救う」(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7063679/)
*8エイジングの未来を変える衝撃の新成分 NMNの秘密 渡辺昭義 2022 栄養書庫 p.15
*9 慶應義塾大学医学部「抗老化候補物質NMN長期内服の健康成人における安全性が明らかに」( https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2024/1/24/240124-1.pdf)
*10 Beyond HEALTHレポート 「NMN、ブームへの警鐘」、今井眞一郎ワシントン大学卓越教授(https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00004/112900384/)
